Construction of Shrines / Temples

熊本の地、百有余年の礎。
未来へ繋ぐ、社寺建築の伝統技術。

熊本の礎を築き、未来へ繋ぐ。それが建吉組の使命です。

建吉組は、大正8年にこの熊本の地で産声をあげて以来、百有余年にわたり、地域の皆様と共に歩んでまいりました。橋を架け、学校を建て、家を築く。その全ては、この土地の暮らしを豊かにしたいという一心からでした。

そして、私たちの仕事の原点には、常に地域のコミュニティの中心にある「社寺仏閣」の存在がありました。その神聖な空間を「地場の建設会社」として守り、修め、時には新たにつくるという大役を、誇りを持って担い続けてきました。

私たちの最大の強みは、高い技術力を持つ宮大工や、各分野(左官、瓦、彫刻、彩色等)の専門職と、長年にわたる協業を通じて築いてきた強固な信頼関係です。建物の様式や規模、ご要望に応じて、そのプロジェクトに最もふさわしい「最高のチーム」を編成できます。

社寺建築には、伝統的な意匠や工法を守るだけでなく、現代の建築基準法への適合、空調・照明・音響・防災設備の導入など、多岐にわたる要件が求められます。私たちは、施主様、設計事務所、宮大工、各種専門業者の間に立ち、複雑な課題を一つひとつ解決し、全体の品質・工程・安全・コストを責任をもって管理することで、プロジェクトを成功へと導きます。

百有余年という礎の上に、建吉組は、先人から受け継いだ知恵と技を、誠実に未来へと繋いでまいります。

Episode

加藤神社様の社務所工事

加藤神社と弊社のご縁

― 半世紀を超えて続く、歴史と信頼の架け橋 ―

弊社は昨年、創業80周年を迎えました。その節目の年に、熊本城内に鎮座する加藤神社様の社務所工事を完成・お引渡しできたことは、何よりの喜びであり、大変光栄に感じております。
加藤神社様は肥後熊本藩初代藩主・加藤清正公をお祀りし、熊本の象徴として長い歴史と伝統を受け継いでこられた神社です。そのような歴史的建造物の整備に携わることは、弊社にとって大きな誇りであり、地域と歴史に貢献する意義深い機会でした。
弊社と加藤神社様とのご縁は、昭和35年に遡ります。当時、拝殿の工事を弊社創業者である笹原健蔵が陣頭指揮し、翌昭和36年には完成を祝して鳥居を寄進しました。奇しくも昭和35年は現在のRC造の熊本城天守閣が完成した年であり、また現代表が生まれた年でもあります。この偶然は、私たちと加藤神社様とのご縁の深さを改めて感じさせる出来事です。
その後も、昭和41年に社務所新築工事、昭和43年には写真場・控室等の増改築工事を担当させていただき、長きにわたり関係を築いてまいりました。

今回の工事概要

― 150年の節目を飾る「令和の大造営」 ―

今回の工事は、加藤神社様創建150年の記念事業と熊本地震復興事業を兼ねた「令和の大造営」として行われました。加藤清正公の偉業と歴史を未来へ受け継ぐことを目的とし、社務所・参集所の新築、城側玉垣の新設、参道石畳の整備など、境内全体の機能と景観向上を図る計画です。
特筆すべきは、バリアフリー化の導入です。熊本城内という公共性の高い場所であることから、車椅子や高齢者の方も安全かつ快適に利用できるよう、段差の解消や通路幅の確保、スロープ設置など細部まで配慮がなされています。
また、工事は特別史跡熊本城跡内で行われるため、熊本市文化財課、熊本城調査研究センター、文化庁など関係機関との綿密な協議が必要でした。特に埋蔵文化財の保護に配慮し、基礎は深さ300〜500mmに制限。文化財を守りながら工事を進めるという、通常の建築とは異なる繊細な条件の中で施工が進められました。

建物のデザインと施工技術

― 伝統美と現代技術の融合 ―

設計は産紘設計様と大森創太郎建築事務所様によるもので、加藤神社様の歴史や加藤清正公の功績を随所に表現しつつ、熊本城や宇土櫓などの景観に調和するデザインを追求しました。外観は既存の拝殿・本殿と同じ白色を基調とし、城内からの眺望にも配慮しています。
構造は鉄骨造ながら、社寺建築に見られる伝統的な屋根の反りや勾配を忠実に再現するため、鉄骨部材の曲面加工や屋根先端の金物細工を実施。BIM(3Dモデル)で精度を検証し、宮大工の工場でモックアップ(仮組み)を行った上で、本組みを行いました。県産木材を使用し、細部まで意匠を凝らした仕上がりとなっています。
玄関扉には、ヒノキ板材に肥後象嵌で製作した社紋を正確に2mmの深さで掘り込み、精緻な加工を施しました。エントランスホールには、加藤清正公と縁のある四国・尾藤家を象徴する庵治石を採用。最大300kgにもなる石をステンレスアンカーで強固に固定し、職人の手で乱形乱張りに積み上げています。
左官壁には、菊陽町「馬場楠井出の鼻ぐり」や白川の水の流れを表現。下地には石膏プラスターを使用し、仕上げには有明海の貝灰漆喰と海藻糊を混ぜた素材で形状を整えています。こうした細部へのこだわりが、加藤神社様にふさわしい重厚感と美しさを生み出しています。

機能性と安全への配慮

― 参拝者の安心を守る現場運営 ―

2階には、創造的復興の象徴として、化粧垂木材をふんだんに使用したバンケットホール「客殿天城」を新設。各仕上げの取り合いや施工精度の管理など、極めて高い技術が求められた空間です。
工事は参拝者や観光客への影響を最小限にするため、基礎掘削・鉄骨建方・屋根外壁材搬入は夜間に、その他の作業は日中に分けて実施。安全第一で進められました。さらに、現場にはデジタルサイネージを設置し、作業スケジュールや事業内容を映像で発信。外国人観光客向けの多言語案内板も設置し、情報発信と地域交流の場としての役割も担いました。

これからの歩み

― 「後の世のため」に続く道 ―

今回の工事を通じ、弊社は長年培ってきた伝統的な建築技術と最新技術を融合させ、加藤神社様の歴史と風格にふさわしい建物を実現しました。
工事にご協力いただいた加藤神社関係者の皆様、氏子の皆様、地域の皆様に、心より感謝申し上げます。
加藤清正公の言葉「後の世のため」に込められた精神を受け継ぎ、これからも地域の皆様と共に、安全で快適な街づくりに貢献してまいります。また、未来の建設業を支える人材の育成にも力を注ぎ、次の世代へ技術と志を伝えていきます。 弊社は、これからも加藤神社様とのご縁を大切にし、共に発展していく所存です。