木造・木質建築とは?
木の可能性を最大限に引き出す木造・木質建築
木材は、加工技術の進化、構造計算の精密化、そして異素材との組み合わせによって、その可能性をさらに広げています。高層ビルや大規模な公共施設、そして災害に強いインフラまで、木材の活躍の場は広がる一方です。
木造建築(木材建築)とは
建物の主要な構造部(柱、梁、壁、屋根など、建物の骨組みとなる部分)に木材を主要な材料として使用している建物を指します。
- 古くから日本で発展してきた伝統的な建築様式(在来工法)や、ツーバイフォー工法、そして最近注目されているCLT工法なども含まれます。
- 建物の強度や耐久性、耐震性といった構造性能が、木材そのものの特性や、木材の組み合わせ方(工法)によって決まります。近年では、耐火技術の進歩により、中高層建築や大規模建築でも木造化が可能になっています。
木質建築とは
建物の主要な構造部に限らず、内装や外装、あるいは部分的に木材や木質材料を使用している建物を指す、より広範な概念です。
- 鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物の内部に、木の壁や床、天井を多用したり、外壁の一部に木材を張り巡らせたりする建築(一例)
- 木造建築とは違い、強度や安全性は主に鉄骨や鉄筋コンクリートが担います。
- 木材の温かみや調湿効果、視覚的な美しさといったメリットを享受しつつ、大規模建築や高層建築において構造的な制約を受けにくいという利点があります。
生命が宿る、奇跡の素材
私たちは日々の生活の中で、意識することなく木材に触れています。
しかし、木材は単なる建材ではありません。
それは、数十年、数百年という時を経て育まれた、生命の記憶が宿る奇跡の素材です。
木造建築について
木造建築は、文字通り「木を主要な構造材として用いた建築物」を指します。日本の風土に適した伝統的な工法から、現代の技術を取り入れた革新的な工法まで、その多様性が魅力です。
軸組工法(在来工法)
日本の伝統的な木造建築の工法で、柱と梁を組み合わせて建物の骨格を形成します。間取りの自由度が高く、増改築が比較的容易なのが特徴です。
大断面集成材工法
短辺150mm以上・断面積300cm²以上の構造用集成材を使用し大空間を実現する中大規模建築の工法です。
CLT工法
CLT(直交集成板)と呼ばれるパネルを用いた工法で、大規模な建築物や高層建築にも対応可能です。コンクリートに代わる新たな構造材として注目されています。
木質建築について
鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物の内部の壁や床、天井、外壁の一部に木材を使用する建築です。
木質建築が拓く新たな価値
木材の持つ調湿・香り効果で、ストレス軽減や快眠、アレルギー緩和が期待できます。また、その独特の質感と光の演出が感性を刺激し、美しい空間を創出します。
構造的自由度と感性価値の融合
構造的な自由度を保ちつつ木材の持つ「心地よさ」や「デザイン性」といった付加価値を建物にもたらします。
サステナブルな社会の実現
木質建築は、建設段階から廃棄に至るまで、他の構造材と比較してCO2排出量を大幅に削減できます。ライフサイクル全体で環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献します。
木造・木質による
環境への影響
近年、環境への配慮や国産材の利用促進の観点から、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律が施行され、公共建築物だけでなく民間の非住宅・中高層建築物においても、木造化、木質化の推進が明文化されました。
木造建築
建物の根幹から木材を利用することで、構造材としての木材が持つCO2固定効果を最大限に引き出し、建設時のCO2排出量削減にも寄与します。
木質建築
構造的な自由度を保ちつつ木材の持つ「心地よさ」や「デザイン性」といった付加価値を建物にもたらします。
どちらも木材の良さを活かす建築ですが、アプローチと影響範囲が異なります。広義には「木質建築」が「木材や木質材料を用いた建築全般」を指す場合もあります。
木材・木質建築が脱炭素化に貢献するメカニズム
01 製造・加工時のCO2排出量削減
建築材料の製造過程で排出されるCO2(エンボディドカーボン)は、建物のライフサイクル全体におけるCO2排出量の大きな割合を占めます。
低エネルギーでの製造
木材は、鉄やコンクリートといった他の主要な建築材料と比較して製造・加工がしやすく、必要なエネルギーが圧倒的に少なくなります。
鉄鋼
鉄鉱石から鉄を製造する際には、高温での精錬が必要であり、大量のエネルギーを消費し、CO2を排出します。
コンクリート
セメントの製造には、石灰石を焼成する際に大量のCO2が排出されます。
02 森林の健全な循環と吸収源の維持
木材を積極的に利用し、伐採・利用・植林・育林という森林のサイクルを健全に回すことが、地球全体のCO2吸収能力を高めることにつながります。
CO2吸収能力の最大化
若い木は、成長が活発なため、CO2吸収能力が高いです。成熟した木は、CO2吸収量が鈍化し、やがて吸収量と放出量が均衡するようになります。適切な時期に伐採し、新しい木を植えることで、森林全体のCO2吸収能力を高く維持できます。
森林の活性化
木材は鉄やコンクリートに比べて軽量であるため、運搬にかかるエネルギーやCO2排出量も削減できます。
国産材の利用促進
国内の森林資源を有効活用することは、輸送にかかるCO2排出量を削減するだけでなく、国内の林業・木材産業を活性化し、地域経済にも貢献します。